もはや遠い昔にも感じるが、昨春は、未知の新型コロナウィルスの流行に際してこれまで前例のないようなことが様々に巻き起こっていた。
その一つが、「休校要請」。
卒業を間近に控えた2月末、安倍晋三首相の宣言によって全国の学校が一斉に休校することとなった。
現在よりもウィルスに対して未知の部分も多かった当時、その流行を抑えるため。安全の確保のため、それは仕方のないことだったのかも知れない。
それでも、突如として「当たり前にあった日常が失われる経験」(※これはそのまま震災時の経験とも重なると思う。)をすることとなった子どもたちはどうだったのだろうか。
あれから1年が経った今こそ。
ここで一度、足を止めて振り返ってみたいと思った。
随分前に見たものだが、また見返してみた。
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【philosophy for children】
「子どものための哲学」。
通称「p4c」と呼ばれ、学校での教育に取り入れられている活動がある。ということを、このドキュメンタリーを見て知った。
NHKオンデマンド | ETV特集 「7人の小さき探究者~変わりゆく世界の真ん中で~」
その「p4c」自体については、ネットで調べればすぐに情報が見つかると思うので省略する。
伝えたいのは、この映像の中の子どもたちのことだ。
この学校の6年生7人にスポットを当てていくものだ。
この学校では震災をきっかけにp4cを始めたという。震災で、それぞれに傷を負った子どもたちの心。その心のうちを語り合うことが「安心感」にもなるし、対話を通して主体的に考える力になっていく。
取材はコロナウィルスの流行以前から行われていたものであったが、その期間の中で休校要請が出されることになる。皮肉にも、そのことが子どもたちの対話の内容、言葉を、非常に深く、重みのあるものにさせていた。
『納得できない』
『意味分かんない』
『大人は大人の考えを子どもに押しつける、それでいいのか』
『子どもの意見はなぜ聞いてくれないのか』
休校要請が出された2月27日、この時点での宮城県で確認されている感染者は「0人」だった。
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授業で、«将来の夢»を書くことを求められ、6年生の「まるさん」は思う。
『なんで将来のことを書くんだろう?』
『今日の僕は何かになれないのかな』
『今の僕は何でもないのかな』
番組ディレクターとの会話で「今のあなたは何者ですか」との問いに対しては、逆にディレクターへ質問をぶつける。すると、彼は社会的肩書を答えようとした。そこでまるさんは「仕事を言うの?そしたら私は小学生?」
「多分でもそういうことじゃない」
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『子どもだってちゃんと考えている』
『この世界について、自分について、ちゃんと見つめて捉えている』
結局のところ、行き着く先はそんなところだろうか。
しかし、我々大人はいつも問われている、とも思うのだ。
子どものまっさらな目線で、その心で。
「子どもだから」で軽んじられてほしくないし、そうであるべきと思う。
この年の小泉小学校では、規模を縮小した卒業式が行われたという。
先生からの『一日一日を大切に過ごして下さい』の重み。
この子どもたちがどんな大人になっていくんだろう。どんな自分を描いていくだろう。
そんなことを思わずにいられなかった。